ERC-3525はこれまでと何が変わったのか?

今回は、先日正式承認が発表された「ERC3525」と、これまでの各種ERC規格についてご紹介させていただきます。

ERCとはいったい何か?

まずは、「ERCとはいったい何だろう」というところから説明させていただきます。
ERCとは「Ethereum Request for Comments」の略で、ざっくり言ってしまうとトークンの規格のことです。

ポケモンで例えると、「ポケモン」という大きなくくりが「イーサリアム」だとすると「ERC」はポケモンが持つ「タイプ」と同じ関係だと考えることができると思います。各種ERCの持つ強味や特徴はそれぞれ異なっています。ポケモンだともっと強いタイプや種族値を持つポケモンがほしい、もっと便利な機能がほしい、といった時には運営側のアップデートや新作の発表を待つことしかできませんでした。

しかし、ERCでは、EIP(Ethereum Improvement Proposal)というGithub上でのユーザーが主体的に参加しながら提案を行い、発議した内容を参加者たちで検討し、承認するといった流れが出来上がっています。これにより、分散型でありつつも、機能の改善やアップデートの呼びかけを行う場が存在しているため、中央集権的な管理者が不在でも問題なく存続できています。しかし、これはイーサリアムの流動性、つまり市場で利用されている数が多いからこそという側面があることも確かです。

各種ERCの特徴

先ほど、ERCのことをポケモンの「タイプ」のような物である。と説明させていただきました。ここからは、ERCにどのようなタイプが存在するのかと、最新の「ERC3525」はこれまでのものとどのように違うのかを説明させていただきます。

ERC20について

まずは、ERCの始祖とも言える「ERC20」について。ERC20は「代替性トークン規格」と呼ばれ「数量的なもの」を扱うことに長けており、FT(Fungible Token)のやり取りで使用されています。FTとはビットコインなどの「暗号通貨」と呼ばれるものです。

ERC721について

一方で「ERC721」は「非代替性トークン規格」と呼ばれ、ERC20と違って、数量的な物ではなく「唯一性のあるもの」の証明などで利用されます。近年盛んに名前を聞く「NFT」などが最たる例ですね!NFT(ノンファンジブルトークン)は、識別性を示すユニークなIDを持ち、ゲームアイテム、音楽、ドメイン名、アートワークなど唯一無ニなデジタルアイテムのことを指します。

ERC1155

次に「マルチトークン規格」と呼ばれる「ERC1155」をご紹介いたします。ERC1155は「セミファンジブルトークン(SFT)」などと言われることもあります。
ここまでに紹介してきたERC20とERC721規格の問題は、1つのスマートコントラクトが1種類の代替・非代替性トークンしかサポートできないことでした。 そのため新しいトークンを展開するたびに新しいスマートコントラクトを作成する必要があり、半代替性トークンを作成することができないという課題がありました。

これによりERC1155トークン規格が制定され、Ethereumの開発者は同じ規格を使用して、代替性、半代替性、非代替性トークンを作成できるようになりました。 さらに、ERC1155によって個別に設定可能な複数のトークンで必要なスマートコントラクトの数が一つとなり、トークン作成プロセスの簡略化に繋がりました。 少々煩雑な説明となりましたので、具体例をあげながらご説明させていただきます。

例えば、ある人がNFTゲームの開発をしようとした際にゲーム内通貨として使用する1種類の代替性トークンと、スキンや銃、アイテムなど独自のゲーム内資産を表す複数の非代替性トークンを作ろうとしたとします。 FTを作れるERC20やNFTを作れるERC721の規格を使う場合、新しい種類のNFTゲーム内アイテムを作るたびに、それに対応する新しいスマートコントラクトを作成する必要がありました。 しかし、ERC1155を利用すれば1つのコントラクトだけでゲーム内に様々なアイテムを作ることができます。

ERC3525

最後に本日のメインテーマである「ERC3525」について解説いたします。
これは先日正式導入されたばかりの最も新しい規格です。端的に説明するとこの規格は先ほど解説した、ERC1155の上位互換と言えるでしょう。上位互換と言える理由としては、この規格最大の特徴にトークンの統合と分割が容易にできるようになった点があげられるかと思います。

詳しく説明するとERC3525は「ID」「VALUE」「SLOT」の3つの構成要素を持っています。それに対してERC1155には「ID」と「VALUE」の2つしかありません。この「ID」と「VALUE」とは唯一無二であることを示す「識別子(ID)」とトークンが持つ保障された「価値(VALUE)」の部分のことです。それに加えて、ERC3525が新しく搭載している「SLOT」とはグループタグの付与のような機能を持っています。


分かりやすく解説

分かりやすく説明すると、SLOT=日本円のとき、100円と100円をお財布に入れて200円にすることができます。しかし、100円と1ドルを同じ財布に入れて円として、ないしはドルとして統合することができない、これが「SLOT」です。同一のグループ内にあるものであれば、統合したり分割したりできますが、別の「SLOT」属性を持つものは統合や分割が出来ません。
ERC3525では、統合や分割されたトークンにも別々のIDが付与されますが、同一のSLOTでくくられているのでVALUE(価値)の分割や統合が容易なのです。
この特性を活かしてERC3525は、今後証券などの金融商品や土地や高額投機対象商品への活用が盛んになっていくといわれています。

終わりに

今回のまとめ

①ERC20はFT、暗号通貨のやり取りに最適化された規格
②ERC721はNFT、唯一無二性持つ商材のやり取りに最適化された規格
③ERC1155はSFT、FTとNFTの両方の性質をあわせ持った規格で、IDとVALUEを持っている。1つのスマートコントラクトのみで多くの処理ができるようになりました。
④ERC3525はERC1155と似ていますが、IDとVALUEの他にSLOTを持ち、そのおかげで唯一無二性を担保しつつトークンの統合・分割が容易になりました

今回、本記事執筆にあたり、改めて昨今のweb3.0情報を目にし、非常に先進的で面白いと感じた一方で分かりづらい言い回しや説明が多すぎるように感じました。日本語での情報が少ないという点があるため仕方のないことでございますが、わざわざ横文字を使用せずに、だれにでも分かる様な形で発信するように心がけた方が将来的なWEB3.0業界の発展に寄与すると私は感じます。

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